最近のリワード広告におけるインストール判定の仕組みについて&ブーストに失敗した話

「無料でポイントゲット」とか「稼げる!ポイントアプリ」といったちょっと怪しい気なアプリ、あなたも一度は目にしたことがあると思います。

これらはリワード広告と呼ばれるものの媒体なのですが、このリワード広告の仕組みとそれによって実現できる所謂「ブースト」という手法について実験も踏まえて説明していこうと思います。

リワード広告とは

アプリで指定された操作を行ったユーザにインセンティブを付与するタイプの広告です。ユーザと広告主の2つの視点から見ていきます。

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ユーザ視点

ユーザは、指定されたアプリをインストールするだけでポイントが貰え、一定以上貯まるとAmazonギフト券iTunesカードに交換できます。

もちろん、すぐに大金が貯まるわけではないのでiTunesカードに交換するためには毎日コツコツ貯めていく必要があります。ストアでの購入、アプリ内課金を絶対に行わないスマートフォンユーザは一定数いるので、その人達は課金アイテムを購入するためにこのような努力を行うわけです。

当然ですが、ユーザの目的はポイントなので指定されたアプリをインストールして初回起動を終わらせればもうそのアプリに用はありません。大半のユーザは端末から削除します。

広告主視点

ユーザが獲得するポイントを支払っているのは広告主です。先程の画像にある「モンスト全国マルチ掲示板...」というアプリの場合、ユーザは5ポイント獲得できるので広告主が支払っている金額は1インストールあたり10〜15円です。

ではなぜ広告主はお金を払ってユーザにアプリをインストールして貰っているのでしょうか、すぐに消されるにも関わらず・・・

それは、同時多発インストールに伴うランキングの上昇があるからです。

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「モンスト全国マルチ掲示板...」はAppStore無料ランキングの7位にランクインしています。AppStoreのランキングのアルゴリズムはストア黎明期の頃からだいぶ変化しており、継続率、起動率といった指標にも連動するようですが、それでも新規インストール数という指標のウェイトは未だに高いです。短期間にインストールされた数が大きければランキングを一気に駆け上がることができます。

ストアランキングに露出することにより、ストアにアクセスしてきた人が興味を持ってインストールすることになります。これが「自然流入」と呼ばれるもので、広告主としては自然流入こそが真の狙いでありこれをいかに大きくできるかが勝負となります。

インストール判定について

「ゲームをインストールして立ち上げた瞬間にsafariが起動してすぐ戻ってきた」という経験をしたことはありませんか?これはリワード広告におけるインストール判定のために必要なアクションなのですが、使っている側としては非常に不快ですね。

なぜこのようなアクションが必要なのかというと、アプリ単体では端末を一意に識別できる情報が得られないからです。この情報がなければ、同じユーザが「アプリのインストール」→「ポイントゲット」→「アプリの削除」を無限に繰り返して同じアプリで無限にポイントをゲットできてしまいます。この不正を防ぐために端末を一意に識別できる情報を管理する役割を、広告会社のサーバとsafaricookieに担ってもらっているのです。説明すると長くなるので、詳しく知りたい方は以下の記事なんかを読むと良いです。

Redirecting…

この手法では広告主の負担も大きいです。広告主はプロモーションを行いたいアプリにリワード広告会社が作った専用のSDKを導入し実装する必要があります。

最近のインストール判定について

safaricookieを使った判定は、初回起動時にsafariが強制的に開くのでとても不快です。さらに、初回起動時にプッシュ通知の許可を求める実装をしていた場合、アラートが計3回も表示されます。

safariを使わないインストール判定手法として最近流行っているのは、URLスキーム型の手法です。URLスキームとはアプリに割り当てることができるアドレスのようなもので、例えばiOSブラウザのURL欄に「coloplwcat:///」と入力すると、端末に白猫プロジェクトがインストールされている場合に限り白猫プロジェクトが立ち上がります。

URLスキームの特徴として、

  • 端末に入っているアプリのURLスキーム一覧情報は取れない
  • あるアプリがインストールされているか否かは分かる

といったことが挙げられます。Objective-Cのコードで「端末に白猫プロジェクトがインストールされているかどうか」を取得したいとき、白猫プロジェクトのURLスキームが"coloplwcat"だと分かっていた場合以下のように書くことで実現できます

if([[UIApplication sharedApplication] canOpenURL:[NSURL URLWithString:@“coloplwcat:///"] ]){ //インストールされている }

リワード広告の媒体であるポイントゲットアプリには、URLスキーム型リワード広告を提供している広告会社のSDKが入っています。このSDKは広告案件アプリのURLスキーマをできるだけ監視しています。

例えば、白猫プロジェクトをインストールすると30ポイント獲得できる案件があったとしましょう。ユーザが案件のボタンをタップしてAppStoreに遷移します。このとき、ポイントゲットアプリはバックグラウンド状態になりますが、iOSの場合最大で10分まで連続で動作し続けることが可能です。AppStoreに遷移したユーザが10分以内に白猫プロジェクトをインストールすれば、”coloplwcat:///”が開ける、つまりアプリがインストールされたことを検知できるのです。 また、10分以内にインストールされなかったとしても、ユーザが再度ポイントゲットアプリを起動すれば白猫プロジェクトがインストールされているか否かは判定できます。

URLスキーム型の最大の特徴は、初回起動時にsafariを起動することがないという点です。出稿するためにSDKを組み込む必要もなく、唯一求められる作業はURLスキームを設定することだけです(これは世に出ている大半のアプリがやっています)。このため、広告主を集めやすいという特徴もあるようです。 実際、コロプラ社のタイトルはどれもsafariは起動しません。なので、URLスキーム型のリワード広告にコロプラのゲームはよく出てきます。

欠点としては、重複ダウンロードを防ぐことができない点です。これに関しては各社いろいろな防ぐ手法を持っているようです。(すべてを防ぐのは難しいとのこと)

インセンティブなしのCPI広告について

ーーーここからは私がお金を稼ごうとする話ですーーー

これまで説明してきたのはインストールしたユーザにインセンティブを与えるタイプの広告です。ここから話すのはインストールしたユーザにインセンティブを与えないタイプの広告、つまり普通の広告です。

一般的なモバイル広告には大きく分けて2つの種類があります。ひとつはCPC(Cost per Click)で、もうひとつはCPI(Cost per Install)です。 CPCは広告がクリックされる度に費用が発生するタイプの広告です。ユーザが画面下部のバナーをタップする度に、広告主はお金を払う必要があります。そのお金は広告会社がマージンを取った後に開発者のもとに支払われます。

CPCの特徴としてはクリックされた後アプリがインストールされてもされなくても費用が発生することろです。開発者視点で見た場合、1クリックで得られる報酬は国内だと8円〜といったところでしょうか。

次にCPI広告。これはアプリが実際にインストールされたときのみ費用が発生するタイプの広告です。クリックされた回数は関係ありません。このインストール判定にも先ほどのURLスキーム手法が使われるわけです。開発者視点で見た場合、1インストール約200円〜300円といったことろです。

(最近日本で大規模にプロモーションを行っているアメリカMachineZone社の「Game of War」というタイトルは、CPI単価が他の何倍もあります。本気度が伺えます。)

ブーストに失敗した話

このCPI広告を導入したまとめサイト閲覧アプリを作り、ブーストを実施したのが12月の中旬です。ブーストに使用したのは某AC社のブーストプログラムで、2000インストール×単価10円=20000円 を最初に支払いました。 (ブーストが単価10円という破格の値段で実施できるのは、この広告会社の提供している広告をアプリに組み込んでいるからです。)

https://itunes.apple.com/jp/app/chaomatome2ch-for-buromaga/id933625850?mt=8&uo=4&at=10l8JW&ct=hatenablog

結果的にブーストは大失敗でした。自然流入は最初の5日でなんと0件。まずはDL数から見てみます。

  • 1日目 649
  • 2日目 315
  • 3日目 141
  • 4日目 74
  • 5日目 41

5日間の合計は約1200。ブーストを行う上で重要なのは超短期間でDL数を一気に伸ばすことなので、これでは効果が薄いです。さらに、これはAppleのせいなのですがこの期間でカテゴリにすら一度も露出しませんでした。ブーストを実施したのはアプリが公開されてから1週間後だったのですが、この時点ではまだランキングに組み込まれてなかったようです。公開後すぐに反映されるものもあればそうでないものもある。これは少し腹立たしいですね。

ちなみに、ブースト実施後8日目にカテゴリランキング50位に入っており、この日のDL数は176でした。アプリを公開して2週間後のことです。

まとめと次回予告

  • ブーストはアプリが公開されてから十分時間が経った後にやろう
  • ブースト会社はちゃんと選ぼう

アプリのブラッシュアップを行い、今度は某AD社のブーストプログラムでまた実験を行ってみたいと思います。今回使った費用は20000円で、収益は0円に近いです。